・「基礎研究って何なの?」
・「どんな魅力があるの?」
・「どんな人が向いてるの?」
といった疑問にお答えします。
0.目次
1.基礎研究について
2.基礎研究の仕事内容
3.基礎研究の魅力
4.基礎研究の一日のスケジュール
5.基礎研究に向いている人
1.基礎研究について
基礎研究は「まだ世の中にはない新しいものを研究・開発していく研究のこと」です!
物事を深くまで追求していく学問としての要素が強く、新しいものを生み出したい、誰も知らないことを知りたいなど、探求心の強い人に向いています。
無から有を生み出す仕事でもあり、すぐに成果が出る職種ではなく、一つのことを究極まで突き詰め、それを忍耐強く続けていけることが重要になり、知的好奇心が旺盛で、日々の研究やそれに向かって勉強することが苦にならない人に向いている職種とも言えます。
2.基礎研究の仕事内容
こちらでは製薬企業について紹介します。
主な仕事内容は「標的の病気に関連するタンパク質の選定、標的タンパク質の理解・化合物のスクリーニング、化合物の合成・試験の繰り返し、Structure-Based Drug Design(SBDD)、化合物の評価系の確立、前臨床試験」の6つです!
➀標的の病気に関連するタンパク質の選定
どの疾患のどのタンパク質を標的にするかは非常に重要になります。この段階では主に生物学を専門とする研究者が、実際に標的タンパク質に色々な手法で細胞レベルでどういう挙動を示すかを調べ、これらの時にはツールとなる化合物などを使って実験を重ね、仮説通りに遺伝子レベル或いはタンパク質レベルが変動するかを確認します。
これらの結果を積み上げて行き、標的を実際にプロジェクトとして進めて行くことに関しての自信(CIR: Confidence in Rational)を深めることが重要です。
➁標的タンパク質の理解・化合物のスクリーニング
基礎研究の内の所謂、早期探索のこの段階では実際の病気に関連するタンパク質が、どのような状態(リン酸化などの翻訳後修飾の有無など)の場合を標的にするのが正しいのかについても検討されます。
また標的タンパク質そのものに対して薬の候補をスクリーニングするのか、或いは標的タンパク質が他のタンパク質との複合体状態をとっている状態を狙うかも検討されます。
➂化合物の合成・試験の繰り返し
標的とする疾患とタンパク質が決定され、早期段階のプロジェクトとして上述の専門を持った研究者に加えて化学を専門に持った研究者の仕事の量が増えていき、膨大な数の化合物の中から実際に標的タンパク質に結合する或いは結合しそうな化合物を選定したり、それらの合成ルートなども考案したりと非常に頼もしいです。
合成を担当している研究者の醍醐味は、自分の手で薬となる化合物をデザインして作れる事ではないかと感じられます。
➃Structure-Based Drug Design(SBDD)
化合物の活性などのパラーメーターを改善して行く際に、実際に標的タンパク質の立体構造情報を利用しながら化合物のデザインの手法をStructure-Based Drug Design(SBDD)と言います。
SBDDでは主にX線結晶構造解析という手法が使われますが、最近は2017年のノーベル化学賞で話題になった極低温電子顕微鏡法(CryoEM)も年々技術的な進歩が目覚ましく、CryoEMが本格的にSBDDに貢献する日も遠くはありません。
➄化合物の評価系の確立
良い化合物がみつかったらそれらを評価する試験が必要であり、基礎研究の段階では、化合物の合成やSBDDと同時に各プロジェクトごとに最適な評価系(スクリーニング系)を確立して行き、この評価系は標的タンパク質の性質や酵素反応を利用した試験や標的タンパク質と化合物との結合を利用した試験です。
これらの評価系はタンパク質と基質などの最小限の成分のみを使う試験や細胞に化合物を投与して反応を見る試験があるなどプロジェクトの進捗段階などに応じて使い分けられています。
特に標的タンパク質と基質を使う評価系には、良質な標的タンパク質を安定的に供給するタンパク質の発現系と精製条件も欠かせず、これらを行うタンパク質生成グループも非常に重要な役割を担います。
➅前臨床試験
プロジェクトチームが作った薬の候補の薬剤を犬やネズミなどの実験動物の体内での薬の効能、安全性、体内での動態などを分析して人に投与しても大丈夫か、或いはその時の用量などについて研究が行われます。
この段階では薬理試験、毒性試験、薬物動態試験、薬剤学試験を行い、基礎研究の目標は臨床試験に薬の候補を送り出すことなので、如何に短期間で多くの候補を送り出せるのかが非常に大切となって、大きなモチベーションの一つです。
3.基礎研究の魅力
基礎研究の魅力は「研究が成功した時の喜び、予想外のデータが出た時の高揚感、教え子が活躍している姿を見ること」の3つです!
➀研究が成功した時の喜び
頭を使いながら体を動かし、多くの失敗を乗り越えた上で掴んだ成功の喜びは計り知れないでしょう。それだけではなく、その成果を学会に報告して、ジャーナリストに投稿することで、世の中に発信する楽しさもあります。
➁予想外のデータが出た時の高揚感
実験を重ねる度に、予想外のデータが出ることがあります。大半の物は、機器の誤作動や実験操作の不手際による失敗ですが、中には大発見に繋がる物も少なくありません。
今この記事を読んでいる方も、「訳が分からなくて面白い!」と知的好奇心が刺激された経験がある方もいらっしゃると思います。
➂教え子が活躍している姿を見ること
上記では実験に直接関係する魅力について書きましたが、同じ釜のご飯を食べた教え子が現場で活躍する姿を見るのは非常に大きく、最初は未熟で右も左も分からなかった学生が、しばらく経つ内に自力で論文を書き、研究室を巣立って活躍する姿を見るのは感無量でしょう。
4.基礎研究の一日のスケジュール
こちらでは大手製薬工場について紹介します。
8:30 出勤
家を出て車で出勤し、自然の中のハイウェーを通って雄大な景色を眺めます。
8:50 出社
9:00 メールチェック・デスクワーク
10:00 ミーティング
その他、研究の進捗報告、研究者同士でのディスカッション、情報交換を行います。
11:00 有機化学実験
12:00 昼休み
上司と近くのカフェで昼食を取ります。
13:00 実験分析
その他、データの確認と解析も行います。
15:00 有機化学実験
17:00 翌日の準備、デスクワーク
18:00 退社
懇親会の為、部下とベトナム料理へ向かいます。
5.基礎研究に向いている人
基礎研究に向いている人は「探究心が強い人、失敗しても前向きな人」です!
➀探究心が強い人
1つ目は、探究心が強いことが挙げられ、自分の知らないこと、分からないことを突き詰めて調べることを得意であり、基礎研究は、物事に対し、好奇心を持って「なぜ~なのか?」「~するためにはどうしたらよいのか?」と常に答えを探し求める資質が必要である為、物事に飽きっぽく、直ぐに目移りしてしまう人には向いていません。
また、答えを導き出すまで根気強く取り組むことで、成果が出た際の喜びとやりがいが得られ、自らの仕事に使命感を持ち、物事を究めたいという熱意のある人が向いています。
➁失敗しても前向きな人
2つ目は、成果を出すまでに長い月日を必要な為、ひとつの物事に対してじっくりと取り組まなければならず、成果が出るまでの過程の中で失敗を繰り返しながら一進一退を繰り返し、多少の失敗で、嫌になって物事を放り出したりすることは許されません。
つまり、失敗を糧に前進しようと思える精神力、何が何でもやり遂げようとする強い意志と、いつかゴールに辿り着けるという心のポジティブさが求められる為、答えを出すまでの過程で失敗しても、それを前向きに捉えられる人が適しています。
上記の事項を知る事で、自信を持って就活ができることでしょう。
是非、参考にしてみてください。
笑顔を忘れずに、面接に励み、内定を勝ち取りましょう。